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2021.07.02 病原体

2021年夏 こどもの「3大夏風邪」:ヘルパンギーナ

著者:森岡 一朗

夏になると増えてくる感染症があります。こどもの3大夏風邪とも言われる「プール熱」、「手足口病」、「ヘルパンギーナ」です。 今回は、その1つの「ヘルパンギーナ」について述べます。

主にコクサッキーウイルスによる感染症で、発熱と、口の中特に喉の奥に小さな水ぶくれや潰瘍などの発疹ができる疾患です。ヘルパンギーナを起こすウイルスには複数の種類がありますので、何度もかかります。症状は、高熱、のどの痛みから始まります。咽頭に赤い粘膜疹がみられ、次に水疱となり、間もなく潰瘍となります。高熱は数日続きます。多くは2~4日の自然経過で解熱し治癒します。しかし、発熱、頭痛、嘔吐がある場合は、髄膜炎が合併していることがありますので、小児科の受診が必要です。まれですが、脳炎を合併して、けいれんや意識障害を起こすこともあります。

感染経路は、飛沫感染や接触感染、経口感染(便の中に排泄されたウイルスが口に入って感染すること)です。感染者の咳、くしゃみ、唾液などの飛沫に含まれるウイルスによって感染したり(飛沫感染)、便に排出されたウイルスが手などに付着し感染します。他人への感染をしやすい時期は発熱などの症状がある時ですが、飛沫や鼻汁から1~2週間、便へのウイルスの排泄は数週間以上続くとされ、症状がない時期でも感染する可能性があります。

予防のためのワクチンはありませんので、保育園・幼稚園での感染拡大防止策は、経口感染対策、飛沫感染対策、接触感染対策として、一般的な予防法の励行が大切です。流行阻止を目的とした登園停止は有効性が低く、また、ウイルス排出期間が長いことからも現実的ではありません。発熱やのどの痛みのある期間は登園を控えて、全身状態が安定してから登園を再開してください。ただし、その後も排便後やおむつ交換後の手洗いの徹底が重要です。

(著者:日本大学医学部小児科学系小児科学分野 主任教授 森岡 一朗)

著者プロフィール

森岡 一朗(もりおか いちろう)

日本大学医学部小児科学系小児科学分野 主任教授

日本小児科学会小児科専門医・指導医、日本周産期・新生児医学会周産期(新生児)専門医・指導医。日本小児科学会の理事、日本新生児成育医学会の理事・予防接種感染対策委員長を務める。専門は、新生児・小児感染症、新生児医学、小児の成長・発達。これらに関する英文学術論文を多く発表している。主な著書に、日常診療と看護ケアのためのNICU感染対策(ヴァンメディカル刊)、新生児学テキスト(メディカ出版刊)がある。